脊椎疾患
脊椎疾患とは
脊椎は、頸椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙椎(5個)、尾椎(3~5個)から成り立っており、この脊椎の中の脊柱管を脊髄が通っています。
脊髄の中には、脳から発せられる指令を伝える神経や、逆に感覚の情報を脳へと返す神経、心臓や消化器などの運動を調節する神経など、いろいろな神経が走っており、大変重要な役割を担っている箇所でもあります。
当院では、交通事故などでよく起きる頸椎捻挫(むち打ち症)をはじめ、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、頸椎症など、脊椎の疾患や、上肢・下肢の痛みやしびれを伴う疾患などを専門的に診断・治療します。
主な対象疾患
脊椎疾患による主な対象疾患は以下の通りです。当院では症状や診察結果、検査結果に基づいて的確な診断を行い、患者さんにとって最適な治療法(牽引療法、理学療法、温熱療法、薬物療法、装具療法など)をご提案いたします。
腰椎椎間板ヘルニア
26個の骨が積み木のように重なって構成されているのが脊椎ですが、背骨と背骨をつなぎ、クッションの役目も果たしているのが「椎間板」です。
椎間板ヘルニアとは、一部の椎間板が本来の位置から飛び出して神経を圧迫し、腰や足に激しい痛みやしびれをもたらしている状態を言います。そして腰の椎間板に生じたヘルニアが腰椎椎間板ヘルニアです。腰痛患者のうち、2~3割の方が腰椎椎間板ヘルニアを発症していると言われます。多くの患者さんは、坐骨神経痛が生じますが、それらの部分でしびれやだるさを感じることもあります。
ヘルニアの多くは自然消褪することが判っています。私が今までに治療してきた多くのヘルニア症例の自然経過と手術成績を踏まえた治療方針に基づき治療を行います。
脊柱管狭窄症
年齢や変性に伴って生じる靭帯の肥厚や椎間板の膨隆、骨棘(こつきょく:骨の一部が棘状に突出したもの)により脊髄や神経根が圧迫される状態が脊柱管狭窄症です。多くは頸椎や腰椎にみられます。好発年齢は50~80歳くらいの中高年で、傾向としては男性患者が多いです。
頸部脊柱管狭窄症の場合は、頸椎症と同様に肩こりや圧痛などの症状が生じます。狭窄が高度になれば脊髄・神経根が圧迫され、上肢の疼痛、四肢痺れ、手指巧緻性障害、歩行障害、排尿障害が発現します。
一方、腰部脊柱管狭窄症の場合は、腰の神経の通り道が狭くなってしまい、腰の痛みや足のしびれを起こします。坐骨神経痛を招く疾患の一つでもあります。
高齢化社会を迎えて頚部脊柱管狭窄症と腰部脊柱管狭窄症の手術が増えていますが、どのタイミングで手術を行うか、どのような手術法を選択すべきかの判断が重要です。私は両者の手術を数多く行ってきたので(執筆論文一覧を参照してください)、的確なアドバイスを提供することができます。
腰椎分離症
腰椎の関節を構成している付近の骨が切れてしまった状態が腰椎の分離です。
これは、成長期にあるスポーツ選手に多く見られる障害でもあり、繰り返しの負荷による腰椎の疲労骨折が原因と考えられています。症状としては、腰を後ろへ反らせた時の腰の痛みなどがあります。
この症状を初期のうちに発見した場合は、スポーツ等を中止し、コルセットを一定時期しっかり装着すれば、分離した部分の骨が元通りにくっつくこと(骨癒合)もあります。ただ成長期であっても分離症を長く患っていたり、成人になるとくっつくことはありません。このように慢性化した場合は、腰痛はそれほど強くなることはなく、痛みが出た時にコルセットの装着、消炎鎮痛剤などを使用します。なお、分離部の痛みが強い、あるいは腰椎すべり症が発症して神経痛が高度となり日常生活に支障をきたすようであれば手術が行われます。
頸椎症
首の骨の変形や椎間板の変性によって引き起こされる疾患が頸椎症です。
中高年の首の痛みやこりの原因としてよく知られています。
主に加齢や外傷が原因で起こります。加齢による頸椎の変化する速度には個人差がありますが、一般的には40歳頃から現れてきます。歳を重ねるほどに変化は大きくなり、中高年世代の方で多くの発症をみます。
頸椎症の代表的な症状は、首の痛みやこりですが、脊髄や神経根に圧迫が生じるとともに上半身や下半身の症状が現れるようになってきます。
上半身の症状としては、痛みのほかに、脱力感、疲労感、手指感覚の違和感、冷え、こわばりなどがあります。また箸が使いにくくなったり、文字が書きづらくなったりします。衣服のボタンがかけられなくなることもあります。症状が進行すると、手の筋肉が萎縮したり、皮膚温度の低下、発汗異常、手指の変形などが見られたりするようになります。
脊髄の圧迫が高度になると下半身にも症状が現れ、歩きにくくなったり、脚がつっぱったりしてきます。圧迫がひどい場合は、排尿・排便の異常も見られます。
また、頸椎の変形により頭蓋内に通じる椎骨動脈が圧迫されると、首を曲げたり捻ったりした時などに血行障害が生じ、めまいを引き起こすこともあります。